大阪地方裁判所 昭和63年(ワ)12138号 判決 1991年6月10日
大阪府大東市深野北一丁目七番八号
原告
大塚攘治
右訴訟代理人弁護士
大西佑二
右同
今井浩三
右同
稲毛一郎
右同
露口佳彦
右大西佑二、今井浩三及び稲毛一郎輔佐人弁理士
杉浦俊貴
大阪府豊中市原田中一丁目一六番六号
被告
日本ダイスチール株式会社
右代表者代表取締役
竹内孝之
右訴訟代理人弁護士
吉利靖雄
右輔佐人弁理士
安村高明
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する.
二 訴訟費用は原告の負担とする.
事実及び理由
第一 請求
一 被告は、別紙物件目録(1)及び(2)記載の各紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置に取付ける雄木型と雌木型とを製造、販売してはならない.
二 被告は原告に対し金一億円及びこれに対する昭和六三年一一月二六日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え.
第二 事案の概要
本件は、紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置の特許権者が、被告が製造販売する打抜き屑の外脱装置に取付ける二個一組からなる木型が右特許権を侵害する物の生産にのみ使用するものである(特許法一〇一条一号)として、特許権に基づいて、その製造及び販売の差止め並びに損害賠償を求める事案である.
一 原告の有する特許権
1 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有している(争いがない。)。
特許番号 第一三八八六六二号
発明の名称 紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置
出願日 昭和五一年一一月四日(特願昭五一-一三三五八九号)
出願公告日 昭和六一年一〇月二七日(特公昭六一-四九〇八〇号)
設定登録日 昭和六二年七月一四日
2 本件発明の特許出願願書に添付した明細書(但し、昭和六一年七月一日付手続補正書による補正後のもの。以下願書添付の図面と併せて「本件明細書」という。)の特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の記載は、次のとおりである(甲一、乙七の一、三、六、一四。別添特許公報〔以下「公報」という.〕参照。)
「所要寸法の基板2の底面に、目的打抜き製品に対応する主要輪郭より大きい内寸法にて適宜巾の突出部3を突設して製品部分挟持平面5をつくりだし、この突出部3の打抜き部における製品取り周囲の打抜き屑分断用切込位置に相当する個所には、その内部に切刃13又は15が嵌入して切断可能とする切割9をそれぞれ刻設し、一方、狭隘部に相当する個所には金属薄板製突刃4を配設し、且つ製品部分挟持平面5の適当位置に複数個の透孔6を穿設すると共に、少なくとも二個の彎曲板ばね7をその自由端が取扱い物品の移動方向に位置するように突出部3の高さより浮出させて基端部で定着し、上部の機体に基板2の上面側を沿わせて取付けた固型押型1と、
この押型1の前記突出部3内側及び金属薄板製突刃に対し僅かの間隙をおいて嵌り合い、シート移動用掴持側A'以外は打抜き製品と対応する形状であつて、周縁及び間隔部12等要所に打抜き屑を分断するための切刃13及び15を配設し、前記固定押型1に対向して上下動する機構に取付けた可動型10とを備えたことを特徴とする紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置」
3 本件発明は次の構成要件から成る(争いがない。)
A1 所要寸法の基板2の底面に、目的打抜き製品に対応する主要輪郭より大きい内寸法にて適宜巾の突出部3を突設して製品部分挟持平面5をつくりだし、
A2 この突出部3の打抜き部における製品取り周囲の打抜き屑分断用切込位置に相当する個所には、その内部に切刃13又は15が嵌入して切断可能とする切割9をそれぞれ刻設し、
A3 一方、狭隘部に相当する個所には金属薄板製突刃4を配設し、
A4 且つ製品部分挟持平面5の適当位置に複数個の透孔6を穿設すると共に、
A5 少なくとも二個の彎曲板ばね7をその自由端が取扱い物品の移動方向に位置するように突出部3の高さより浮出させて基端部で定着し、
A6 上部の機体に基板2の上面側を沿わせて取付けた、
A7 固定押型1と、
B1 この押型1の前記突出部3内側及び金属薄板製突刃に対し僅かの間隙をおいて嵌り合い、
B2 シート移動用掴持側A'以外は打抜き製品と対応する形状であつて、
B3 周縁及び間隔部12等要所に打抜き屑を分断するための切刃13及び15を配設し、
B4 前記固定押型1に対向して上下動する機構に取付けた、
B5 可動型10とを、
C 備えたことを特徴とする紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置。
二 被告の行為
1 被告は、業として、昭和六二年一〇月三〇日ころ、紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置に取付ける別紙物件目録(1)記載の雄木型及び雌木型一組(以下、「イ号物件」という。)を製造し、これを訴外レンゴー株式会社に販売し、平成二年三月二九日ころ、紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置に取付ける別紙物件目録(2)記載の雄木型及び雌木型一組(以下、「ロ号物件」といい、「イ号物件」及び「ロ号物件」をまとめて「被告物件」という。)を製造し、これを訴外東大阪ケース株式会社に販売した(争いがない。).
2 イ号物件は次の構成から成る(a4及びb2については争いがない。その余は別紙物件目録(1)及び検甲一ないし八により認定。)。
a1 所要寸法の基板02の底面に、目的打抜き製品に対応する主要輪郭より大きい内寸法にて鉄製薄板03を直立に植設して製品部分挟持平面05をつくりだし、
a2 この鉄製薄板03の打抜き部における製品取り周囲の打抜き屑分断用切込位置に相当する個所には、鉄製薄板03の一部を折り曲げて、鉄製薄板013又は015が嵌入して切断可能とする嵌入空間09をそれぞれ設け、
a3 一方、製品部分挟持平面05の狭隘部には鉄製薄板04を配設し、
a4 且つ製品部分挟持平面05の適当位置に二個の透孔06を穿設すると共に、
a5 七個の直方体状のスポンジ体07をその下面を鉄製薄板03の高さより下方に浮出させて上面を基板に貼着し、
a6 紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置の上部の機体に基板02の上面側を沿わせて取付ける、
a7 雄木型01と、
b1 この雄木型01の前記鉄製薄板03内側及び鉄製薄板04に対し僅かの間隙をおいて嵌り合い、
b2 シート移動用掴持側0A'以外は打抜き製品と対応する形状であつて、
b3 周縁に打抜き屑を分断するための鉄製薄板013及び015を直立に植設し、
b4 打抜き屑の外脱装置の、前記雄木型01に対向して上下動する機構に取付ける、
b5 雌木型010
3 ロ号物件は次の構成から成る(a4及びb2については争いがない。その余は別紙物件目録(2)及び弁論の全趣旨により認定。)。
a1 所要寸法の基板02の底面に、目的打抜き製品に対応する主要輪郭より大きい内寸法にて鉄製薄板03を直立に植設して製品部分挟持平面05をつくりだし、
a2 この鉄製薄板03の打抜き部における製品取り周囲の打抜き屑分断用切込位置に相当する個所には、鉄製薄板03の一部を折り曲げて、鉄製薄板013又は015が嵌入して切断可能とする嵌入空間09をそれぞれ設け、
a3 一方、製品部分挟持平面05の狭隘部には鉄製薄板04を配設し、
a4 且つ製品部分挟持平面05の適当位置に二個の透孔06を穿設すると共に、
a5 二四個の直方体状のスポンジ体07をその下面を鉄製薄板03の高さより下方に浮出させて上面を基板に貼着し、
a6 紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置の上部の機体に基板02の上面側を沿わせて取付ける、
a7 雄木型01と、
b1 この雄木型01の前記鉄製薄板03内側及び鉄製薄板04に対し僅かの間隙をおいて嵌り合い、
b2 シート移動用掴持側0A'以外は打抜き製品と対応する形状であつて、
b3 周縁及び間隔部012に打抜き屑を分断するための鉄製薄板013及び015を直立に植設し、
b4 打抜き屑の外脱装置の、前記雄木型01に対向して上下動する機構に取付ける、
b5 雌木型010
三 本件の主な争点は次のとおりである。
1 被告物件が、本件発明にかかる紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置の生産にのみ使用する物(特許法一〇一条一号)であるか否か。
2 被告物件の構成a5「七個(イ号物件)ないし二四個(ロ号物件)の直方体状のスポンジ体07をその下面を鉄製薄板03の高さより下方に浮出させて上面を基板に貼着し」が、本件発明の構成要件A5「少なくとも二個の彎曲板ばね7をその自由端が取扱い物品の移動方向に位置するように突出部3の高さより浮出させて基端部で定着し」と均等か否か。
3 被告物件が本件発明の構成要件A1、A2、A3、B1及びB3を充足するか否か。
すなわち、(1) 被告物件の構成a1、a2及びb1の鉄製薄板03が本件発明の構成要件A1、A2及びB1の「適宜巾の突出部」及び「突出部」に、(2) 構成a2及びb3の鉄製薄板013及び015が本件発明の構成要件A2及びB3の「切刃」に、(3) 構成a2の嵌入空間09が本件発明の構成要件A2の「切割」に、(4) 構成a3及びb1の鉄製薄板04が本件発明の構成要件A3及びB1の「金属薄板製突刃」に、それぞれ該当するか否か.また、イ号物件の雌木型の鉄製薄板013及び015の植設が本件発明の構成要件B3の「周縁及び間隔部12等要所に…切刃13及び15を配設し」に該当するか否か.
4 原告主張の損害額
原告は、被告が、被告物件の製造販売が本件特許権を侵害することを知りながらもしくは過失により知らないで、被告物件を製造販売して、昭和六一年一〇月二七日(出願公告日)から昭和六三年一一月二六日までの間に、毎月七〇〇〇万円の売上を得て、その一割に当たる毎月七〇〇万円、合計一億七五〇〇万円の利益を得、原告は同額の損害を被つた旨主張する.
第三 争点に対する判断
一 争点1(間接侵害の成否)について
本件特許請求の範囲には、「上部の機体に基板2の上面側を沿わせて取付けた固定押型1と、……前記固定押型1に対向して上下動する機構に取付けた可動型10とを備えたことを特徴とする紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置」(本件発明の構成要件A6、A7、B4、B5及びC)と記載されているところ、被告物件は、上部機構が固定式で下部機構が可動式の打抜き屑の外脱装置(片面可動型)のみならず、上下動する上部の機構に基板の上面側を沿わせて雄木型を取付け、これに対向して上下動する機構に雌木型を取付ける紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置(両面可動型)にも取付けることができ、その場合も打抜き屑の外脱作用を行うことができるものと認められる(乙一一、乙一二、検乙一、検乙二、弁論の全趣旨)。
原告は、(1) 本件特許請求の範囲には、可動型に関して「上下動する機構に取付けた可動型10」との記載があるのに対して、固定押型に関しては、「上部の機体に基板2の上面側を沿わせて取付けた固定押型1」と記載してあるのみであるが、上部の機体が固定されたもの(片面可動型)のみを対象とするのであれば、「上下動する機構に取付けた」に対応させて、「装置本体に固定される上部の機体に基板2の上面側を沿わせて取付けた」と記載されて然るべきであり、そのような記載になつていないことは、「固定押型1」が取付けられる上部の機体が固定式であるか可動式であるかを問わないことを示している、(2) 上部の機体が固定式であつても可動式であつても、<1>従来の押型と可動型との嵌合では打抜き屑が不充分な落ち方をしていたのが、本件発明の切刃、切割にょり、打抜き屑外脱部で確実に細分断されて落下する、<2>従来は製品部分が押型側に吸着して落下時間に遅れが生じがちであつたものを、本件発明の透孔での空気の流通により吸着力をなくし、そして板ばねの反力によつて製品部分は押型から離反して可動型と共に下降する、<3>これらの板ばねは、シートが打抜き部から打抜き屑外脱部へと移行するときに、反りや捩れがあつても押型の突出部に接触するのを防止するのに役立つている、という本件発明の作用効果はいずれも発揮できるから、本件発明はその作用効果からみて、両面可動型、片面可動型にかかわらず雄木型と雌木型とが相対移動する型に共通のものであり、上部の機体が固定式のものに限定されなければならない理由はなく、したがつて、本件発明は上部機構が固定式で下部機構が可動式の打抜き屑の外脱装置のみならず、両機構が可動式の打抜き屑の外脱装置をも対象とするものである旨主張する.
そこで検討するに、(1) 本件特許請求の範囲にいう「固定押型」という表現自体から、上部の機体が上下動する機構を有しない(固定式)ため、それに取付けた木型も上下動しないので「固定押型」と表現したと解するのが通常平均的な理解であるうえ、(2) 本件明細書の発明の詳細な説明中に、両型の取付けに関して、「押型1は上部の機体に…固定し、可動型10は…機体に組込まれた昇降機構上部の取付部に固定する」との記載があること(公報五欄三〇ないし三五行目)から明らかなように、両型とも機体に「固定」されるにもかかわらず、上部の機体に取付ける型のみを固定押型と表現し、下部の機体に取付ける型を「可動型10」と称した所以は、「可動型10」は、「固定押型1に対向して上下動する機構に取付け」られて同機構とともに上下動することから可動型と表現したものであり、「固定押型1」は、右の如き上下動する機構を有しない機体に取付けられるために、可動型10の「可動」と対比的に「固定」の語を用いて「固定押型」と表現したと解するほかなく、他に発明の詳細な説明を斟酌しても、両型とも可動するものも含む趣旨は何ら窺えないから、本件発明は、雌雄型を用いた紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置のうち片面可動型のもの、すなわち固定した上部の機体に基板の上面側を沿わせて雄木型を取付け、これに対向して上下動する機構に雌木型を取付けることを特徴とする紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置に係るものであると認めざるを得ない。なお、特許発明の技術的範囲は、作用効果が同一であるからといつて特許請求の範囲の記載を越えて定めることはできず、ことに本件発明出願当時、板材料を加工する装置やシート状材料の処理装置において、片面可動型(乙一、乙二、乙三、乙四、乙一一)及び両面可動型(乙五、乙六)の打抜き屑外脱装置がいずれも公知であつたにもかかわらず、特許請求の範囲には右のとおり上部の機体が固定式のもののみを記載しているのであるから、原告主張の作用効果の同一を理由として両面可動型の打抜き屑外脱装置にまで本件発明の技術的範囲を拡大解釈することはできない.
したがつて、被告物件は本件発明にかかる紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置の生産にのみ使用されるものであると認めることはできない。
二 争点2(構成要件A5に関する均等の主張)について
1 被告物件が、本件発明の構成要件A5「少なくとも二個の彎曲板ばね7をその自由端が取扱い物品の移動方向に位置するように突出部3の高さより浮出させて基端部で定着し」の構成そのままを備えていないことは明らかである。
2 (原告の主張)
原告は、被告物件の構成a5は本件発明の右構成要件と均等と評価されるべきであると主張し、その理由を次のとおり主張する.
被告物件の構成a5の七個(イ号物件)ないし二四個(ロ号物件)の直方体状のスポンジ体07も、その自由端を鉄製薄板03の高さより浮出させて基端部で定着しており、右スポンジ体07は、本件発明の彎曲板ばね7の有する、「シートの製品部分を押型1から離反させる反力作用」及び「シートの打抜き部から打抜き屑外脱部への移行に際してシートの反りや捩れがあつても押型1の突出部3に接触するのを防止する、自由端が突出部3の高さより浮出ていることに基づく案内作用」を備えているから、被告物件は本件発明の構成要件A5の彎曲板ばね7と同一の作用効果を奏する。彎曲板ばね7をスポンジ体07に置換することは可能(置換可能性)であり、かつ、右置換は、本件明細書の発明の詳細な説明中の実施例の説明部分に「製品部分狭持平面5の要所若しくは透孔6及び板ばね7取付部を除く部分に適宜厚さのスポンジ体を張着してある.」(公報四欄三九ないし四一行目)との記載があることからみても極めて容易(置換容易性)である。
本件発明においては、シートに反りまたは捩れがある場合には、シートが打抜き部から打抜き屑外脱部へと移行するときに、反りや捩れがあつても、シートが彎曲板ばねに滑り接触し、その移動につれてシートに衝撃を与えることなく、したがつてシートの製品部分と打抜き屑部分との繋ぎ部を分断することなくシートの反りまたは捩れが矯正されるようになり、シートが硬い突出部に接触しないように案内される。被告物件においても、雌雄両木型間の間隔は、シートの移動に伴つて徐々に狭くなり、嵌合の直前においてはその間隔が非常に狭くなつているから、グリツパーに掴まれているシートの前端縁側はともかくとして、後端部側に反りや捩れがある場合には、シートの反りや捩れが雄木型の硬い突出部に接触して衝撃を受け、製品部分と打抜き屑部分とが分離されるトラブルが発生することになるが、自由端を突出部の高さより浮出させた、表面はもちろん全体が非常にやわらかな軟体であるスポンジ体を設ければ、シートに反りや捩れがある場合にはシートがスポンジ体の自由端面側にすべり接触しその移動につれてシートに衝撃を与えることなく、したがつてシートの製品部分と打抜き屑部分との繋ぎ部を分断することなくシートの反りや涙れが矯正されるようになり、シートが硬い突出部に接触しないように案囚される.また、打抜き屑の外脱装置の可動型は、シート載置後に初めて上昇するというものではなく、通常の処理速度で作動させる場合には、高速度の外脱処理を図るためにシートの移行時に既に上昇を始めており、シートの移行に伴つて可動型が上昇して固定押型及び可動型の間隔が嵌合の直前において狭くなるから、この場合には案内作用が重要な意味を持つ.特に、シートを高速で移行させる場合にはシートの反りや捩れによつてシートに不測の動きが生じることもあつてなおさらである。
3 しかしながら、本件明細書中の発明の詳細な説明によれば、本件発明は、従来の紙器打抜き装置においては、打抜き型で所要の形状にシートを打抜き、製品となる部分とその周囲並びに中間部に生ずるいわゆる打抜き屑とを分離することなく隣接する打抜き屑外脱位置まで移行させて、この外脱位置で雌雄両型により製品部分を保持しつつ打抜き屑部分を外脱させて機台の下方に落下させ、しかる後装置の外部に製品部分だけを引き出して取り外すようにし、これらは全自動的になつているが、段ボール紙を用いる打抜き箱の場合、その材質、種類、表面加工等によつてシートに反りや捩れが生じやすいので、これを打抜き部から打抜き屑外脱部に横送りする際、外脱用型にシート端縁が引掛つて定位置に達する前に製品部分が抜け落ちたり、或いは速い速度で移行するために部分的に引き千切れたりする事故が起り易い不都合があること、又外脱位置での打抜き屑の外脱操作中に、抜き型から下方に落下する打抜き屑が複雑な形状を有するためにこの型支持材の一部に引掛つて正常に屑溜に集積されず、その結果連続して落下する打抜き屑が相互にからみ合つて外脱操作に支障を来すことになるため、その支障を避けるために当初の打抜き工程において打抜き屑部にも適当な長さに分断可能な如く切込みが付されるが、この切込みが完全なものになる程、打抜き部から打抜き屑外脱部への移行時に製品部分と打抜き屑部分とが分離し易くなるので、この打抜き屑分断用切込みはあまり深く入れておくことができず、これらが相乗して種々のトラブル発生の原因となつており、そうしたトラブルを生じないように作業を行う手段として、加工中のシートを打抜き工程から打抜き屑外脱位置までの移行操作や打抜き屑の外脱処理を人手によつて補助しなければ打抜き屑の処理が円滑に行い難く、どうしても作業能率が低下し、しかも多くの人手を必要として工費が嵩む等多くの問題点を有していたことを従来技術の問題点として把握したうえで(公報二欄八行目ないし三欄一七行目)、そのうち、従来の紙器打抜き装置においては、段ボール紙を用いる打抜き箱の場合、その材質、種類、表面加工等によつてシートに反りや捩れが生じやすいので、これを打抜き部から打抜き屑外脱部に横送りする際、外脱用型にシート端縁が引掛つて定位置に達する前に製品部分が抜け落ちるという問題点(公報二欄一九ないし二四行目)の克服のために、「少なくとも二個の彎曲した板ばねをその自由端が取扱い物品の移動方向に位置するように突出部よりも浮出させて基端部で定着」する構成を採用し(公報三欄三四ないし三六行目)、右構成により、<1>「板ばねの反力によつて製品部分は押型から離反して可動型とともに下降する」(公報四欄一二、一三行目)、即ち、「外脱処理済みシートは可動型10の下降と共に押型1付属の板ばね7の反発力で可動型10上に載せられて速やかに定位置まで下降する」(公報六欄一二ないし一四行目)作用(反力作用)、及び<2>「シートが打抜き部から打抜き屑外脱部へと移行するときに、反りや捩れがあつても押型の突出部に接触するのを防止するのに役立つている。」(公報四欄一四ないし一七行目)、「運転に入れば打抜き部で打抜きされたシートが掴持移送手段により打抜き屑外脱部に送られる際、押型1に定着された板ばね7によつて、シートの前端がたとえ反つていても突出部3に衝突することなく案内され、本発明の打抜き屑外脱装置の所定位置までシートが移行し、可動型10に載置される」(公報五欄三九行目ないし六欄一行目)作用(案内作用)を有し、「打抜きシートの反り若しくは捩れ等に起因する該シートと押型との衝突のため、位置ずれして可動型の一部を破損し、且つ製品が不良になるごとき一切のトラブルが解消する。」(公報六欄二九ないし三三行目)という効果を生じるものである。
すなわち、本件発明における彎曲板ばねは、反力作用とともに、シートの反りや捩れの上端位置が突出部の下端位置より高くなつた場合には、彎曲板ばねに接触したシートの反りや捩れの部分から受ける作用力の一部を垂直方向に分散することにより、シートの反りや捩れの部分を垂直方向に押圧しながらシートの移動方向(例えば、公報第3図では左側から右側へ移動する。)に円滑に案内して、彎曲板ばねよりもシート移動方向(物流方向)からみて下流側の突出部に衝突することなく案内する作用を有し、突出部の下端位置より低いが彎曲板ばねの下端位置よりは高い場合も、同様に作用してその後のシートの移行中に可動型の上昇等でシートの反りや捩れの上端位置が高くなつて下流側の突出部に衝突することを予防し、円滑に案内する作用を有するものである.
これに対して、被告物件のスポンジ体07は、直方体状のスポンジ体の上面を雄木型の基板02の底面(打抜き屑の外脱装置の上部機構に取付けた状態における下側の面)に貼着し、スポンジ体の下面、すなわち右貼着した面の反対側の面(原告は、これが自由端であると主張する。)を鉄製薄板03の高さより浮出させてあり、雌雄両木型の嵌合方向に収縮し、雌雄両木型が離反する際には離れる方向に復元する力が働くので、原告主張の「シートの製品部分を押型1から離反させる反力作用」を有する(争いない。)けれども、スポンジ体の下面は、取扱い物品の移動方向ではなく、移動方向(水平方向)に対して直交する方向(垂直方向)に形成されているから、構成要件A5の如く「その自由端が取扱い物品の移動方向に位置するように」定着されているものではなく、しかも、スポンジ体には取扱い物品の移動方向と対向する垂直の側面(前面)も存する。そのため、シートの打抜き部から打抜き屑外脱部への移行に際してシートに反りや捩れがあると、スポンジ体前面の部分に到達した際の右反りや捩れの上端位置がスポンジ体の下面より高いときには、反りや捩れ部分は、スポンジ体の下面と接触する以前に、スポンジ体の前面と当接することになり、スポンジ体は垂直方向のみならず、シートの移動方向と平行な方向(水平方向)に伸縮してシートに対して移動方向と反対側へ押し返す力を作用するため、シートを正常な状態で可動型10の所定位置へ案内する作用はなく、スポンジ体がシート移行時のシート案内作用を備えているとは認められない(乙一一、乙一二、乙一三、検乙一、検乙二)。ただ、シートの反りや捩れ部分がスポンジ体前面の部分に到達する前は反りや捩れの上端位置がスポンジ体の下面よりも低かつたが、右到達以後に雌木型の上昇等のために持ち上げられて、反りや捩れの上端位置が高くなる場合には、シートの反りや捩れの部分がスポンジ体の前面に接触することなく直接スポンジ体の下面に滑り接触して、その移動につれてシートに大きな衝撃を与えることなく、従つてシートの製品部分と打抜き屑部分との繋ぎ部を分断することなくシートの反りや捩れが矯正されるようになり、シートが鉄製薄板に接触しないように案内される効果を生じうるが、このように特定の条件下における反りや捩れに関してのみ本件発明と同様の作用効果を生じるにすぎない場合に、本件発明と同一の作用効果を奏し、本件発明と同じ目的を達するものであると認めることはできず、かえつて、前記のとおり、シートの反りや捩れ部分がスポンジ体前面の部分に到達した際にスポンジ体の下面よりも高いときには何ら案内作用を有しない(本件明細書記載の実施例の板ばね7は、この場合でも案内作用を有する。)ことを考慮すると、被告物件のスポンジ体の貼着は本件発明の構成要件A5とは作用効果を異にするものであると認めるべきである、したがつて、被告物件の構成a5が本件発明の構成要件A5と均等の関係にあると評価することはできない。
原告は、本件発明の案内作用は付随的な作用効果にすぎず、スポンジ体が反発力を発揮して製品部分を押し出す作用効果を奏する以上、板ばねと同等である旨の主張もするが、本件発明出願当時、鋼製板金型枠の打抜き装置、薄板金属や紙器等の打抜き装置において、打抜き後のシートの製品部分を型部材から離別させる目的のために弾力のあるゴムを用いることや、紙器打抜き装置における打抜き屑外脱装置において同目的のために弾力のあるスポンジ体を用いること、更に、そのためにスポンジ体等の下面を本件発明の突出部に該当する部材の下端より浮出させて設けるという技術思想は公知であつた(乙一、乙九、乙一〇)と認められるから、本件発明の構成要件A5は、従来の単なる弾性体による製品打抜き後の反力の利用を更に進めて、右反力作用に加えて前記案内作用も持つようにするために、板ばねをその自由端が取扱い物品の移動方向に位置するように突出部の高さより浮出させて基端部で定着する特別な構成を採用したものと認められ、しかも、前示のとおり、本件明細書の詳細な説明中では、案内作用に基づく効果が本件発明の特有の効果として強調されているのであるから、構成要件A5による案内作用は、本件発明の本質的な作用効果というべきである.したがつて、原告の右主張も理由がない.
三 以上いずれの点ゆらみても、原告の請求は理由がない。
(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 長井浩一 裁判官 辻川靖夫)
(別紙)
イ号図面説明書
イ号図面は「紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置に取付ける雄木型と雌木型」(イ号物件)の構造等を示す図である.
図面の説明
第一図(A)~(D)夫々は雄木型の底面図、平面図並びに第1図(A)のC-C線およびD-D線における断面図であるとともに、第2図(A)(B)夫々は雌木型の平面図および底面斜視図、第3図は全体斜視図、第4図は紙器打抜き装置によつてシートから打抜かれる打抜き製品(製品部分)の斜視図である.
なお、第3図中の矢印Xは雌木型が打抜き屑の外脱装置に取付けられて作動する際の往復運動方向を示しているとともに、矢印Yはシートの移動方向を示している.
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
第4図
<省略>
(別紙)
物件目録
(1) 別紙イ号図面説明書及び図面に示される紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置に取付ける雄木型と雌木型
(2) 別紙ロ号図面説明書及び図面に示される紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置に取付ける雄木型と雌木型
(別紙)
ロ号図面説明書
ロ号図面は「紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置に取付ける雄木型と雌木型」(ロ号物件)の構造等を示す図である。
図面の説明
第1図(A)~(E)夫々は雄木型の底面図、平面図並びに第1図(A)のC-C線、D-D線およびE-E線における断面図であるとともに、第2図(A)(B)夫々は雌木型の平面図および底面斜視図、第3図は全体斜視図である。
なお、第3図中の矢印Xは雌木型が打抜き屑の外脱装置に取付けられて作動する際の往復運動方向を示しているとともに、矢印Yはシートの移動方向を示している。
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
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<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告
<12>特許公報(B2) 昭61-49080
<51>Int.Cl.4B 26 D 7/18 識別記号 庁内整理番号 7173-3C <24><44>公告 昭和61年(1986)10月27日
発明の数 1
<54>発明の名称 紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置
審判 昭58-5675 <21>特願 昭51-133589 <85>公開 昭53-57589
<22>出願 昭51(1976)11月4日 <43>昭53(1978)5月24日
<72>発明者 大塚攘治 大阪市城東区関目2丁目18番 市営住宅1の1002
<71>出願人 大塚攘治 大阪市城東区関目2丁目18番 市営住宅1の1002
<74>復代理人 弁理士 三木正之
審判の合議体 審判長 柿本昭裕 審判官 西村敏彦 審判官 堀部直行
<57>特許請求の範囲
1 所要寸法の基板2の底面に、目的代抜き製品に対応する主要輪郭より大きい内寸法にて適宜巾の突出部3を突設して製品部挾持平面5をつくりだし、この突出部3の打抜き部における製品取り周囲の打抜き屑分断用切込位置に相当する個所には、その内部に切刃13又は15が嵌入して切断可能とする切割9をそれぞれ刻設し、一方、狭隘部に相当する個所には金属薄板製突刃4を配設し、且つ製品部分挾持平面5の適当位置に複数個の透孔6を穿設すると共に、少なくとも2個の弯曲板ばね7をその自由端が取扱い物品の移動方向に位置するように突出部3の高さより浮出させて基端部で定着し、上部の機体に基板2の上面側を沿わせで取付けた固定押型1と、
この押型1の前記突出部3内側及び金属薄板製突刃に対し僅かの間隙をおいて嵌り合い、シート移動用掴持側A’以外は打抜き製品と対応する形状であつて、周縁及び間隙部12等要所に打抜き屑を分断するための切刃13及び15を配設し、前記固定押型1に対向して上下動する機構に取付けた可動型10とを備えたことを特徴とする紙器打抜き装置における打抜き屑の外脱装置。
発明の詳細な説明
本発明は紙器の打抜き装置において、打抜き屑を能率的且つ合理的に、製品部分から外脱させる紙器打抜き屑の外脱装置に関する。
物品の包装用紙箱として板紙或いは段ボール紙を所要の形状に打抜いて作られる打抜き組立箱は、多量生産に適し安価に提供できるので近時汎用されている。そしてその製造は工場において殆んどが高速度で加工できる設備により行なわれているが、その最終部分の工程に属する打抜き作業は未だ高速度での処理ができず、生産性を高めるには多くの人手を加えて作業機の動作を補助しなければならない等の問題がある.
この原因を検討すると、従来の打抜き装置では、所要の寸法に裁断されたシートを受け入れて、先づ打抜き型(通称トムソン打抜きなどもこれに含まれる。)で所要の形状にシートを打抜き、製品となる部分とその周囲並びに中間部に生ずるいわゆる打抜き屑とを分離することなく隣接する打抜き屑外脱位置まで移行させる。次いでこの外脱位置で雌雄両型により製品部分を保持しつつ打抜き屑部分を外脱させて機台の下方に落下させ、しかる後装置の外部に製品部分だけを引き出して取外すようにするもので、これらは全自動的になつている。ところが段ボール紙を用いる打抜き箱の場合、その材質、種類、表面加工等によつてシールに反りや捩れが生じやすいので、これを打抜き部から打抜き屑外脱部に横送りする際、外脱用型にシート端縁が引掛つて定位置に達する前に製品部分が抜け落ちたり、或いは速に速度で移行するため部分的に引き千切れたりする事故が起り易い.又外脱位置での型による打抜き屑の外脱操作中に、抜き型から下方に落下する打抜き屑が複雑な形状を有するためにこの型支持材の一部に引掛つて正常に屑溜めに集積されず、その結果連続して落下する打抜き屑が相互にからみ合つて外脱操作に支障を来すことになる.従つて当初の打抜き工程において打抜き屑の外脱が容易となるように、打抜き屑部にも適当な長さに分断可能なごとく切込みが付されるが、この切込みが完全なものになる程、打抜き部から打抜き屑外脱部への移行時に、製品部分と打抜き屑部分とが分離し易くなるので、この打抜き屑切断用切込みはあまり深く入れておくことができず、これらが相乗して種種のトラブル発生の原因となつていた.
現状では上記したようなトラブルを生じないうに作業を行なう手段として、加工中のシートを打抜き工程から打抜き屑外脱位置までの移行操作や、打抜き屑の外脱処理を人手によつて補助しなければ打抜き作業に付随した打抜き屑の処理が円滑に行ない難く、どうしても作業能率が低下し、しかも多くの人手を必要として工費が嵩む等多くの問題点を有していた.
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、被加工物に対する人手による補助作業を必要とせず、作業速度を高めても何等支障なく高能率で合理的に、打抜き作業後の打抜き屑の外脱が円滑に行なえる打抜き屑外脱装置を提供せんとするものである。
すなわち、所要寸法の基板の底面に、目的打抜き製品に対応する主要輪郭より大きい内寸法にて適宜巾の突出部を突設して製品部分挾持平面をつくりだし、この突出部の打抜き部における製品取り周囲の打抜き屑分断用切込位置に相等する個所には、その内部に切刃が嵌入して切断可能とする切割をそれぞれ刻設する。そして狭隘部に相当する個所には金属薄板製突刃を配設し、且つ製品部分挾持平面の適当位置に複数個の透孔を穿設すると共に、少なくとも2個の弯曲した板ばねをその自由端が取扱い物品の移動方向に位置するように突出部よりも浮出させて基端部で定着し、上部の機体に基板の上面側を沿わせて取付け固定押型を形成する.
また、上記押型の突出部内側及び金属薄板製突刃に対し、僅かな間隙をおいて嵌り合う寸法で、シート移動用掴持部側以外は打抜き型と対応する形状てあり、その周縁及び間隔部等の要所に打抜き屑を押切るための切刃を配設して可動型を形成し、上記固定押型に対向して上下動する機体の部分に取付ける.特にこの可動型は、製品複数個取り型の場合に間隔部を切刃によつて相互に連結して、連結された各取り型間に捩れ、たわみ等が生じないように切刃が補強材として機能し、可動型の強度保全に貢献している.
このように構成される本発明装置によれば、従来の押型と可動型との嵌合では打抜き屑が不充分な落ち方をしていたのが、打抜き屑外脱部で確実に細分断されて落下する.同時に製品部分が押型側に吸着して落下時間に れが生じ勝ちであつたものを、透孔での空気の流通により吸着力をなくし、そして板ばねの反力によつて製品部分は押型から離反して可動型と共に下降する.また、これらの板ばねは、シートが打抜き部から打抜き屑外脱部へと移行するときに、反りや捩れがあつても押型の突出部に接触するのを防止するのに役立つている.このように確実な打抜き屑外脱作業が自動的に操業可能となり、しかも全打抜き工程が従来能力の2倍以上で実施可能となつたのである。
以下本発明装置を実施例図について説明する.
第1図に示すものは固定の押型1であつて、適宜厚さの合板製基板2の底面に、打抜き製品30(第6図参照。)の外形寸法よりやや大きい(約2mm。)寸法で内側が製品輪郭に対応するように、適宜巾と高さを有する突出部3を1シート複数枚取りに合せて張着突設する。この突出部3の、打抜き部における製品取り周囲の打抜き屑分断用切込み位置に相当する個所には、後記の切刃13又は15が嵌入して打抜き屑の切断を可能とする幾つかの切割9、9をそれぞれ刻設する。第1図に示すシート移動用掴持側Aのみは突出部3を設けず、輪郭中の狭隘部に相当する部分には金属薄板製突刃4を固着する。突出部3で限定される製品部分挾持平面5には、複数個の吸着防止用の透孔6を穿設し、且つこの押型1を上部の機体に取付けたときの物流方向に、自由端が向き、そして突出部3高さよりも先端が浮出すように弯曲させた板ばね7を少なくとも2本、その基端において基板2に定着する。又、製品部分挾持平面5の要所着しくは透孔6及び板ばね7取付部を除く部分に適宜厚さのスボンジ体を張着してある。そしてこの固定押型1は上面を上部の機体に沿わせて基板2の四隅部に穿設した長孔3を介し位置調節自在にボルト締着するのである。
第2図に示すものは可動型10であつて、上記押型1と同様な適宜厚さの合板製で、打抜き製品30の外形寸法よりやや小さい(約1.5~2mm)寸法で製品の輪郭に対応する形状に形成してある。シート移動用掴持側A’が一体となるようにして複数の打抜き製品(図は2枚どりの場合を示す.)に応ずる押盤11を並列させ、この間隔部12の適当な個所で切刃13を両押盤11、11間に跨設する.これらの切刃13は、両押盤11、11の間隔部12の両縁に切込んだ部分まで延長しこの部分を基部13’とし、それぞれの裏面位置で該基部13’をL形にして取付片部13’をつくりだし、木ねじ14にて押盤11に定着する(第5図参照。).また、この可動型10の掴持側A’を除く周縁部には、前工程の打抜き部において打抜き刃で切目が入れられて製品取り周囲の打抜き屑となる部分の、分断用切込み位置とほぼ合致する位置に、切刃15を所要数側方に突出して設ける。これらの切刃15も押盤11縁を内部に切込み、該切込みに差込まれる部分を基部15’とし、それを裏面側でL形にして取付片部15’をつくりだし、押盤11裏面に木ねじで定着する。従つて、斯かる可動型10の各切刃13又は15に対して、上記固定の押型1の突出部3に刻設した複数の切割9が協働し、切刃13又は15によつて打抜き屑が容易に分断されるようになる。
このように形成された押型1と可動型10とは、周知の打抜き装置における打抜き屑外脱部の機体に取付ける。すなわち、押型1は上部の機体に底面を下向きにして板ばね7自由端及びシート移動用掴持側Aが製品部分迭り出し側になるように固定し、可動型10は上記押型1に整合対応するように、機体に組込まれた昇降機構上部の取付部に固定する。両者の位置関係が打抜き部からの移動ピツチに合致すると共に所定の条件、すなわち押型1と可動型10との嵌め合い位置も調節設定し準備を整える。
運転に入れば打抜き部で打抜きされたシートが掴持移送手段により打抜き屑外脱部に送られる際、押型1に定着された板ばね7によつて、シートの前端がたとえ反つていても突出部3に衝突することなく案内され、本発明の打抜き屑外脱装置の所定位置までシートが移行し、可動型10に載置される。次いで可動型10が上昇し押盤11、11が押型1のそれぞれの型内に進入すると、押型1の突出部3及び金属薄板製突刃4により、シートは前工程で打抜かれた切目から、可動型10の押盤11と押型1の製品部分挾持平面5とで挾持される製品部分30’を残して打抜き屑は分離される。これと同時に周囲の打抜き 及び間隔部12の打抜き居は切刃15又は13により適所において予め設定された寸法に短く分断されて屑溜めに落下する。残つた製品部分30’と掴持移動部と複数個の製品部分を仮繋ぎする部分のみとなつた外脱処理済みシートは可動型10の下降と共に押型1付属の板ばね7の反発力で可動型10上に載せられて速やかに定位置まで下降する。このとき押型1に透孔6が穿設されているので、ここから空気が出入りし、押型と製品部分との間が負圧になつて密着することを防ぎ、可動型10の下降時に製品部分30’が押型1の製品部分挾持平面5に吸着するのを防止する。
なお、第7図に示すような製品部分30’と掴持移動部等を残した状態で打抜き屑外脱装置から製品取出し部に送り出されたものは、製品部分30’以外の部分を人手により簡単に取外し、第6図に示すように打抜き製品30として揃え出 程に送られるのである。
このように本発明の外脱装置によれば、従来装置で問題となつていた、打抜き屑が細かく分断されないためそれをさばくのに必要であつた多くの人手を不要とし、さらに、打抜きシートの反り若しくは捩れ等に起因する該シートと押型との衝突のため、位置ずれして可動型の一部を破損し、且つ製品が不良になるごとき一切のトラブルが解消する。その結果、作業速度を従来装置の2倍程度に高めても何等支障を起すことなく円滑な運転ができ、特に複数個取りの型の場合可動型の各押盤は間隔部で互に切刃で連結されるから一体的になり、その耐久性は著しく高まるのである。
以上は製品の内部に抜き孔部分のないものについて説明したが、たとえば第8図に示すような抜き孔32をもつ組立て箱用打抜き製品30Aの打抜きに際しては、第9図及び第10図にその一部を示すように、押型1Aには打抜き製品30Aの抜き孔32に相当する位置に、金属簿板製突刃4aを突設しておき、可動型10Aにはそれに対応する受け孔16を穿設しておくことにより、無理なく容易に処理できる.
また、本発明の趣旨に従えば、通常実施されるこの種の打抜き装置における打抜き屑外脱装置としては、その打抜き製品の形状が異なつてもそれに応じた条件の下で変更し得ること、或いは切刃や突刃の取付要領も任意変更可能であることはいうまでもない.
図面の簡単な説明
図面は本発明の打抜き屑外脱装置の一実施例を示すもので、第1図は押型の底面図、第2図は可動型の平面図、第3図は第1図のⅢ-Ⅲ視図で板ばねを取付けた状態を示す図、第4図は押型の突刃の取付要領図、第5図は可動型の切刃の取付状態を示す斜視図、第6図は打抜き製品の斜視図、第7図は打抜き屑外脱装置から送り出される際の一例を示す図、第8図は打抜き製品の別例図、第9図は押 の別例一部底面図、第10図は可動型の別例一部平面図である。
1……押型、2……基板、3……突出部、4……金属薄板製突刃、5……製品部分挾持平面、6……透孔、7……板ばね、8……長孔、9……切割、10……可動部、11……押盤、12……間隔部、13……切刃、15……切刃、16……受け孔、30……打抜き製品、32……抜き孔.
第1図
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第3図
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第2図
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第4図
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第5図
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第6図
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第7図
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第8図
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第9図
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第10図
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特許公報
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